ごあいさつ
従来の「モノづくり」は、より効率的で安価な大量生産、より便利がコンセプトでありましたが、「モノ」があふれた現代社会において、果たして「人は幸せになったか」という素朴な疑問に対して、「YES」とは言い難い状況にあります。このことは、グローバル化、市場原理優先による競争激化などに起因するうつ病の急増、毎年2万人以上に及ぶ自殺者などからも明白であり、産業革命以後の物質的なイノベーションは限界に来ていると言えます。
そこで、「精神的価値が成長する感性イノベーション拠点(以下、感性COI拠点)(※1)」では、従来型の「モノの豊かさ」から、精神的価値が成長する「こころの豊かさ」へのパラダイムシフトを基本コンセプトに、モノとこころが調和する「こころ豊かな社会」を目指します。
感性COI拠点では、「こころ豊かな社会」の実現のために、最新の脳科学を応用して、人と人、人とモノを感性(こころ)で繋ぐBrain Emotion Interface(BEI)の開発を目指しています。これまで客観的に評価することが困難とされていた「ワクワク」、「イキイキ」、「きれい」などの感性や「五感」によって脳にインプットされる知覚をBEI技術によって可視化(見える化)し、定量化することで、個人の感性やニーズなどに対応した製品、サービスが提供できるようになり、衣食住、車、教育、医療など多様な分野において社会の大きな変革が起こることを期待しています。
例えば、製品開発やデザイン決定の場では、エンジニアやデザイナーの主観によって製品やデザインの評価を行っていますが、知覚の可視化や感性の可視化技術が開発されると、ユーザーの感性に最適にフィットする製品パッケージ、カタログ、あるいは製品そのものの印象や操作性など、様々なものがより客観的な脳科学に基づいたデータに裏付けられ、製品やサービスに応用していくことが可能となります。また、ドライバーの気分に応じて内装の色合いが変化したり、操作性が変化したりすることで、感性に応えるワクワクした運転が可能になるクルマも開発できます。更に、熟練者と未熟練者の違いを可視化することで、より優れた操作性や生産性を実現することが期待されます。また、将来、学校での子供の状態をBEIで可視化し教育に反映したり、うつ病患者の脳機能可視化による客観的な診断法、自分の脳の状態をモニターするニューロフィードバックにBEIを組み込んだ新たな治療法、ストレスを自己制御する予防法など教育、医療分野においても革新的なソリューションの創出に貢献できるのではないかと考えています。
広島大学、マツダを中核拠点とする感性COI拠点は、サテライト拠点として、知覚研究で有名な生理学研究所とNTTデータ経営研究所を中心としたグループ(生理研COI-S拠点)、光技術を得意とする静岡大学、浜松ホトニクスを中心としたグループ(光創起COI-S拠点)が加わり、総勢20を超える大学、研究機関、企業が参画するユニークな拠点です。広島大学の脳・感性研究を核に生理学研究所の優れた知覚研究と光創起COI-S拠点の優れた光技術を融合することで革新的なBEIを開発していきます。また、マツダ、三菱ケミカル、アンデルセングループ、コベルコ建機、広島ガス、TOTO、サッポロホールディングス、凸版印刷、三井化学、清水建設、明治、コニカミノルタで構成するKANSEIコンソーシアムやNTTデータ経営研究所の有する応用脳科学コンソーシアム等の企業ネットワークを活用したBEIの応用開発によりBEIの社会実装化を目指すと共に、BEIそのもののビジネス化も視野に入れて研究開発に取り組んで参ります。全参画機関一丸となって、BEIの開発と社会実装に全力で取り組み、モノとこころが調和する「こころ豊かな社会」の実現のために革新的な感性イノベーションの創出に挑戦します。
※1 平成25年度からスタートした文部科学省「革新的イノベーション創出プログラムCOI STREAM:Center of Innovation Science and Technology based Radical Innovation and Entrepreneuship Program)」
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